Headphone Junky

歴だけはそこそこあるホムシアオーマニの偏ったお話

「木製ハウジングで平面駆動?ああ、あれねー」FOSTEX T-60RPの超個人的レビュー

もう手元にはありませんが、ほんの一時期だけ、FOSTEXのT-60RPを持っていましたのでレビューを残しておこうと思います。

 

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FOSTEXは今でこそ日本が誇る、ヘッドホンメーカーの雄といったイメージですが、ぼくがオーディオをはじめた当初は、自作スピーカー用のスピーカーユニットを供給するメーカーといったほうが通りがよかったと思います。

ぼく自身、オーディオ趣味へは、自作スピーカーから入ったので、FOSTEXのユニットは何種類も使いました。まだ手元に残してあるものもあります。

また、FOSTEXスタンドアローンのスピーカーは、家庭用ではなく、プロ用のモニタースピーカーとして、よく知られた存在でした。

 


FOSTEXは、OEMでいろんなメーカーのスピーカーユニットを供給していたので、日本に住んでいれば、FOSTEXという名前は知らなくても、いつのまにかFOSTEX製のユニットを使ったスピーカーの音は聞いたことがある、という人がほとんどだと思います。

その後、コンシューマー用としても、ユニットだけでなく、スタンドアローンのスピーカーを作り、販売して一般的な知名度は上がったと記憶しています。

 


そういった個人的な経緯があったので、ヘッドホンメーカーとしてのFOSTEXは、ぼくにとってまったくのノーマークでした。

ぼくがヘッドホンに興味を持ち出したのは、ほんのここ5年ほどの間のことで、ぼくの中でのあの、自作スピーカー用のスピーカーユニットメーカーが、ヘッドホンでは、日本の主力メーカーのひとつであることに、軽い衝撃を受けたのを昨日のことのように思い出せます。

 


FOSTEXのヘッドホンの歴史をひもとくと、スピーカーユニットと同じように、まず他のメーカーのモデルのユニット供給や、OEMから入ってきているという共通点があるようで、なんとなくですが、納得させられます。

 


FOSTEXのヘッドホンといえば、なんといってもいちばん有名で、評価が高いのはTH900シリーズでしょう。

ぼくもこの有名なヘッドホンには、非常に興味があったので、ETHER Cを購入する際に比較試聴しました。

試聴したTH900は、音数が多く、S/Nもよく、ステージ感にも優れていたと記憶しています。ただ、そのときの試聴環境のせいか、アコースティックギターなどの高域に、若干ですが縁取りしたような、作られたワイドレンジ感を感じました。

ぼくの耳には平面駆動があっているのか、ETHER Cではそれがなかったため、そのときは結局ETHER Cを購入しましたが、当時、

何機種か試聴したなかで、その次に欲しかった機種がFOSTEXのTH900です。

 


話をT60RPに戻します。

前回の記事でも書いたように、以前、インターホン対策として、開放型のヘッドホンを探している時期がありました。個人的には、平面駆動のヘッドホンが気に入っています。

そちらのヘッドホンは、サブ的に使用することを考えていましたので、価格は安いほうがいいです。ネットで情報を集めると、値段も手頃で半開放型のT60RPの評価がすばらしく高いようで、絶賛調のレビューが、それこそ山のようにありました。以前聞いた、同じメーカーのTH900の印象もよかったのでFOSTEXのこの人気機種なら間違いないだろうと思い、試聴もしないまま、ぼくはネット通販で購入することにしました。

 


T60RPは発売当初から人気が高く、一時品薄の時期もあったようですが、ぼくが購入したのはタイミング的にかなり遅かったので、注文後、翌日には届きました。

開封後、本体を確認すると、凝った形の、木のハウジングがすばらしく、この作りで新品3万円程度とは思えないデザインと完成度です。

ネットでの情報では、欠けやフシなどの天然の材料である木ならではの瑕疵がある個体もあるようですが、うちの個体は問題ありませんでした。

装着感も軽く、イヤーパッドも快適で、この点もすぐれていると思います。

 


さて、音です。

新品を購入したので最初の音出しの瞬間は失敗したと思いました。たしかに平面駆動特有の音の反応の速さは感じるものの、音が固いのです。

ただ、これは多分しばらく鳴らし込めば解消するだろうと判断、しばらくはこの機種をメインで使い続けることにしました。

 


T60RPで、しばらくのあいだ音楽を聞き続けると、音がこなれてきたのか、それとも耳のほうが慣れてきたのかはわかりませんが、だんだんと楽しめるようになってきました。

具体的にいうと、高域はしなやかに、のびやかに。振動板を欲張って大きくしていないせいか、低域もそれほど重量感のある低域ではありませんが、速くて締まった低域が反応よくなるようになりました。

この、反応よく鳴る、というのは、低音はとくにむずかしいと思います。ハウジングの反射などを使って盛ってある低音は、量感は多いですが、ふくらむことが多く、ひどいものになると遅れて聞こえることもあるのですが、T60RPの低音は、素直に聞こえます。

全体の情報量としては、特に多くはないでしょうが、分離もよく、過不足を感じさせません。

情報量が多くないとはいっても、クラシックなどの大編成ものなんかでも、混濁させず分離させ、うまく鳴らし切る性能はあると思います。

 


印象を大雑把にくくると、リファレンス的な音、いわゆるハイファイな音も表現するのがよいのかもしれません。響きが好きな人にとってはつまらない音と感じるかたも多いかもしれません。

特に半開放で、ハウジングが厚めの木製ということで、余計な響きがつきにくく、ついてもすぐに減衰してくれているようです。木のハウジングは、厚みでかなり表情が変わるように思います。もう少し薄くして、反対に木の響きを活かすようにすることもできたと思いますが、モニターとしても、ある程度使えるラインを狙ったんだと思います。

そして、半開放とすることで、ここでもうまく音抜けのよいバランスをとっているのだろうと感じました。

 


ただ、この半開放というのが個人的には難点になりました。

他の方のレビューでは、このヘッドホンを装着していても、かなり外の音が聞こえるという評価を数件読みました。ぼくは、このヘッドホンを着けていてもインターホンが聞こえるだろうと思い込んで購入したのですが、かなり小さな音量で音楽を流していても、うちの環境ではインターホンが聞こえないのです。

半開放型ということで、開口部がかなり小さいせいだと思います。

音に関しては、今まで使ったヘッドホンとは、また毛色の違う音で、気分転換使うにはいいかなとは思ったのですが、用途に合わないということで、今回は購入後2週間で、残念ながら買い取りに出しました。現在はもう手元にありません。

 


良くも悪くも木製ハウジングのヘッドホンは、モノとしての価値も高いと思うので、この機種に限らず、また手にしてみたいと思います。