Headphone Junky

歴だけはそこそこあるホムシアオーマニの偏ったお話

ウエストリバー信者です。その1

f:id:koichirokoichiro:20230215222915j:image

いろいろアンプを試したが、結局ぼくが戻るアンプは、ウエストリバーだ。
スピーカーで音楽を聞くのがメインだった頃、
安価なAVアンプからスタートしたアンプの変遷は、アキュフェーズのプリアンプ、プロシードのパワーアンプまで肥大したのち、ウエストリバーアンプに収束した。

ヘッドホンオーディオがメインになってからも、ウエストリバーのプリアンプ に付属のヘッドホン端子をメインで使っていた。
エストリバー製のヘッドホンアンプがあれば購入したのだが、専用のヘッドホンアンプの作成はしないとウエストリバーアンプの主宰者から言われていた。

ぼくは、漠然とヘッドホン専用のアンプに憧れていた。プリアンプとパワーアンプのセパレートアンプ。DACに関しても専用機を使っているようなぼくみたいな人間は、「専用」と言う言葉に弱い。
その流れで、何種類か専用機も試してはみた。どのヘッドホンアンプを試しても、ウエストリバーのプリアンプ に付属のヘッドホン端子の方が、ぼくの耳にはここち良く聞こえた。
まあただそれらの専用ヘッドホンアンプの良さを感じるだけの能力がないだけなのかもしれないが。

ということで、ウエストリバー製のプリアンプとパワーアンプのペアをずっと使い続けてきた。
エストリバーアンプは頻繁にアップグレードされる。もちろん有償だから、ヘッドホン環境に重心を置くようになってからはそれに必要なプリアンプのグレードアップだけをお願いしていた。
パワーアンプに、ウエストリバー最廉価のものを使用しており、いつかスピーカー環境に戻ることがあれば上位のものを購入する腹づもりもある。使わないアンプにお金を掛けるのはなあ。そう考え、今のパワーアンプのアップグレードは置いておいた。
まあいつかね、と考えていたのだ。

しばらく前にぼくの思い付きからウエストリバーさんにSTAX用のアダプターを作成いただいた。パワーアンプの出力をSTAX用の信号に変換してくれる。
それが非常に具合が良い。当たり前だが、ウエストリバーの音がするのだ。ひずみ感がなく、スッと耳に入ってくる。
これならパワーアンプを使える。
エストリバーさんもSTAXを駆動するなら、本当なら最低30wのアンプ出力が必要だろうと言われていたのだ。

本当だろうか。
エストリバーのパワーアンプには2ラインある。
エントリーラインのEシリーズ、ハイクラスラインのαシリーズに分けられ、それぞれ出力違いが用意されている。
買い替えを頻繁にしたくない。購入するなら最低αシリーズからは選びたい。
現在使用しているE-5Hはエントリーラインの中でも出力5wの最廉価機だ。
このエントリークラスのアンプでもSTAXアダプターを繋いだSR-009Sとshangri-la jrは素晴らしい音で鳴る。
スピーカーを鳴らす可能性のある今後のことを考えるとウエストリバーさんのおすすめは100w以上の機種だと言う。
100wクラスとなると、価格もサイズも大きく変わる。

ネットを見ていると、ウエストリバーのパワーアンプが中古で販売されているのを発見した。
出力は30wのものだ。
ちょうどいいが、今後現行型を購入することを想定すると、予算的には無駄ではある。
ただし、この30wのアンプを買ってみて、5wのものとあまり違いが出ないのなら現行型を買う意味は薄れる。

いろいろと逡巡してはみたが、ぼくはその30wの旧型アンプを買うことにした。
ぼくがウエストリバーに興味を持ったよりも前の機種が、どんな音なのか単純に興味を持ったのもある。

支払いを済ませるとアンプは翌日には届いた。
型番はWRP-α1mk2だ。
ぼくはウエストリバーのアンプから出てくる音は好きだが、アンプのデザインはあまり好みではない。
プリアンプもツマミを削り出しのパーツに交換して使っている。
手元に来たWRP-α1mk2の外観デザインは、今までのウエストリバーアンプのイメージよりもずいぶんと良かった。
実際に重いが、その重量が伝わってくる印象のデザインで、製造されてからかなり経つモデルだからだろう、ところどころ錆は出ているが、塗装も厚く大きな傷もない。丁寧に使われていたことが想像できた。

さっそくSTAXアダプターを接続して音を聞いてみた。
一聴して静かになった。
底ひずみが売りのウエストリバーアンプだ。
E-5Hでも充分に安定した静かな音だと感じていた。
それがさらに増した印象だ。
そして実体感が強くなった。
予想はしていたが低音の押し出しがまったく変わってしまった。
やはり30wと言ったところか。相応のグレードアップはあるのだろう。

ちょうどウエストリバーさんでは、旧機種も含めたグレードアップの提案がされていた。
枯渇していたSEコンを発見できたと言うことで、在庫限り、早い者勝ちである。
ぼくは迷わず手元のWRP-α1mk2のグレードアップを決めた。

底が見えないヘッドホンたち!972兄弟!

f:id:koichirokoichiro:20230206225814j:image

昨年末、クリスマスごろにORIGINAL VOICEの972MAXを購入した。

本来なら、そのころには12月頭に発注した受注生産製のパワーアンプが届いて、それどころではない予定だったのだがアンプ製作完了の連絡がない。
(あとで製作者に聞いた話では、外注先の筐体の印刷が仕上がらなかったそうだ)

それならばと、気になっていたヘッドホンを先に買うことを思いついた。

それはORIGINAL VOICEの新型のヘッドホンだ。
ばくはすでにORIGINAL VOICEの972PROを使っていてる。非常に素晴らしいヘッドホンだと感じていた。

新型の音質傾向をメーカーに質問してみた。返事はすぐに来た。972MAXは972PROの上位モデルではなく、性格の違う兄弟モデルのようなものだということだった。
ぼくの個人的な評価では、972PROは音質の割に価格がすこぶる安い。
円安の関係で972MAXは値上げされているが、972PROと同じグレードの音がするなら、その価格でもコストパフォーマンスはかなり優れているだろう。
またツイッターで拝見した購入者さんにもDMで聞いてみた。
非常に好印象のようだ。

欲しくなったらすぐに欲しい。
自分へのクリスマスプレゼントだ。ぼくは自分に言い訳して、注文することにした。

新しいヘッドホンは中1日で届いた。

すぐに開梱する。
見慣れた外観のヘッドホンが出てきた。
それもそのはず、972MAXは972PROとほぼ同形状である。開放型のグリルに開いた、開口部の形が若干違う程度の違いしかないのだから。

付属品のケーブルが、標準ジャックの銀色の被覆のものから、3.5mmジャックの黒い細いものに変更されている。ここも円安の皺寄せだろうか。
いいヘッドホンでも、ケーブル次第では能力を発揮できないのではないとぼくは考えている。
このご時世だ。仕方ないのかもしれないが、正直言ってもったいないなと感じた。
ぼく自身は手元に972PRO用のケーブルがある。ぼくはこのケーブルを使い回すことにした。

f:id:koichirokoichiro:20230206225849j:image

当日には隠し玉も届いた。972MAXを実際に購入したかたの評価では、アンプを奢るとそれに追随して音質があがっていくそうだ。
ただ、個人的にはウエストリバーアンプから浮気することは今のところ考えていない。
ヘッドホンアンプについては今までに何種類か使ってはみたのだが、結局ウエストリバーのプリアンプに付属のヘッドホン端子に戻ってしまっていた。そんな経験上、そのプリアンプのヘッドホン端子を超えるのはなかなかハードルが高いと感じている。
それならパワーアンプはどうだろう。プリアンプとペアで使う予定のパワーアンプ。その出力をヘッドホン出力に変換する変換器がオークションサイトで見つけていた。それを落札してみたのだ
これを使えば、まだ届いていないパワーアンプも、有効に活用することもできそうだ。

さて、音出しだ。
とりあえずはいつものようにプリアンプ のヘッドホン端子に接続しよう。
もちろんケーブルは972PROに付属していた6.3mm標準ジャックのものだ。

972PROの開梱時でもそうだったので、心配はしていなかったが音出しの最初は少しこもり気味。やはりしばらく通電しないといけないようだ。
そのまま約2時間程度聞き続けたが、どんどん音がクリアになっていった。
この時点でも充分に素晴らしい音だ。
その後パワーアンプ→ヘッドホン出力変換器を通すことで、さらに良く鳴るようになった。

音の感想を書いていこう。
比較のヘッドホンも全て上記のパワーアンプから変換器を利用して比較した。

音場は972PROとほぼ似ている。
それなりの距離感を持って聞こえてくる印象だが、一聴すると近く感じるかもしれない。
それは音像が大きく感じられるせいだろうか。
972PROよりも972MAXのほうが若干ではあるが高域が抑えられているのだろう。音にさらに輪郭を感じない。
奥行き表現も同様で、無理矢理奥行きの分離を出すことなく、自然にひとつひとつの音を感じさせてくれるようだ。
手持ちのダイナミックタイプのヘッドホンの中で音場に1番秀でるのはLSAのHP-1だが、音場に関してはそれには若干だが劣るような気がしたので聞き比べてみた。
それは杞憂だった。現環境では明らかに972系のほうが音の定位がはっきりして、音場も広く感じられる。
ダイナミックレンジに関しては高域優先の972PRO、低域優先の972MAXというイメージだ。これも比較試聴すればというレベルで、どちらも優秀だと思う、と言うか、このあたりの表現は手持ちの定価20万円クラスのダイナミックタイプのヘッドホンレベルでは比較にならないくらい良いと感じる。
強いて言えばクラシック向きの972PRO、ロックを気持ちよく聞くなら972MAXなのかもしれない。ただし、あくまでも強いて言えばのレベルだ。個人的にはどちらも万能にどんなジャンルでも聞ける。

この2機種の価格、10万円以下を考えると価格破壊もいいところだ。
正直音のスピード感を除けば、この2機種のヘッドホンの表現力は、STAXのSR-009Sクラスと同等レベルに感じるのだ。

お試しにならないお試し?バランスDAC導入!

f:id:koichirokoichiro:20230119181116j:image

前回、アンバランス→バランス変換のトランスを導入し、好印象だったことを書いた。
そうなると本格的にバランス出力のDACを入れたくなってしまった。

 

ただ、本格導入ということになるとそれなりの機種が欲しい。
最近はSTAXアダプター、Shangri-la jr、SONOMA用の電源、それにプラス隠しダマでもそれなりに使った。
要するに本格導入するにはいますぐには予算がこころもとないと言うことだ。
やむを得ない。今回は仮ということで安価なDACを購入することにした。

 

ぼくが信頼しているオーディオチューニングショップがある。
新潟にある根布産業さんだ。
こちらではオーディオ機器のチューニング、自作スピーカーの販売、自作ケーブルの販売をされている。
まだぼくが3管式のプロジェクターを使っている時代だったか。そう、15年ほど前のことだろう。実際にお会いし色々とお話しも伺ったこともある。
実直そうな印象の風貌。某音響機器メーカーで働いていたこともあるそうで機器の内部構造についても詳しい方だだった。

その根布産業さんが最近特に力を入れているのが中華DACのチューニングだ。
安価な中華DACの内部に手を入れることで、高級機に匹敵する音質になるという。
ぼく自身は、物量には意味があるというスタンスでオーディオ機器を選ぶ傾向がある。
まあなんだ。いい音を出すにはカネが掛かることを経験として感じていたのだ。中華DACから高級機と遜色ない音が出るなんて。根部さんの人柄を知っていても、俄には信じられない話だ。

ただし、今回は新DACの、本格導入の前のお試しのようなものという立ち位置だ。根部さんがそう言うなら、中華DACを購入してチューニングをお願いしてみてもいいかな。そう思っていた。


久しぶりに根布産業さんのHPを覗いてみた。
HPやブログには、いろんなDAC、プレイヤーやアンプのチューニングについての情報がかなりの量、掲載されている。
少し前に一世を風靡した感のあるOPPODACや、パナソニックのUHD-BDレコーダーのチューンと共に沢山の中華DACのチューンも記録されていた。

その中にいわゆる中華DACのカテゴリーの製品、SMSLのSU-9の記事が有った。
USB入力とRCA出力に問題はあるが、チューニングさえすれば、それ以外の音は良いとのことだ。
今回、ぼくはXLR出力で使う予定で、いまの環境上、PCからはDDCから同軸でも出力できる。
なんと言っても安い。調べてみると新品の販売価格で、4〜5万円程度のようだ。

さらに根布産業さんのHPの特価品のコーナーをチェックする。スクロールして見ていくと、そこに同氏がチューニングされたSU-9があるではないか。
チューニングしたのもかかわらず、ノーマル品を買うよりも安い。
2、3分思案し、ぼくは購入することにした。

 

根部さんにチューンされたSU-9は、代金を振り込むと中一日で届いた。
さっそくシステムに繋いだ。期待してはいなかったがやはりUSBの音は良くない。輪郭がキツく立体感がない。
しかしDDCからのデジタル出力を、同軸で入れてみると全く違う音だ。
ぼくが使っているDDCは48khz16bitまでしか対応してしていないが、音はUSBでPCから直接SU-9に入れるよりも数段うえだ。
輪郭が実に自然で情報量が多く、レンジが広いように聞こえる。

現在ぼくが使用しているDACは、日本オーディオという音響用の測定器も開発しているメーカー製で、この日進月歩のチップが礼賛されるご時世に、バーブラウンのPCM56というCD初期のチップを積んでいる。
ただし、音は良い。
不案内なので詳細は理解していないのだが、デジタル、アナログそれぞれに計5基のトランスを使い、配線には綿巻線を使用。コンデンサの外装のフィルムは剥がし、メーカー独自の出力アンプ素子を開発している。
まあ簡単に言うと物量の権化ということだ。
これでバランス出力さえあれば安価なDACをお試しで買ってみたりはしなかっただろう。


しかしまあ、買ってみると価値観がひっくり返ってしまった。
これがバランス出力の力なのだろうか。

SU-9が全てにおいて上だとは言う気はない。
項目を作って点数を付けていくとほとんどの人が、大体の項目でネブチューンのSU-9が優れていると感じるのではないだろうか。


お試しどころかメインを食いそうだ。

いやはや。
すごい時代が来たものだ。

KGSSHV CARBONのバランス駆動

f:id:koichirokoichiro:20221013162855j:image
f:id:koichirokoichiro:20221013162852j:image
f:id:koichirokoichiro:20221013162858j:image

現在、ウエストリバーのアダプターを使って静電型ヘッドホンを鳴らしている。その前はKGSSHV CARBONという静電型専用のアンプだった。
このアンプで聞くSR-007Ashangri-la jrの音は、それなりに良い。ウエストリバーのアダプターと比較すると、写実性に欠ける気がするが、音が柔らかく繊細で、いわゆる一般的に言われる美音なのだと思う。
最近は、このアンプ、色付けが強い気がするのと音色が単調に聞こえることもあり、ウエストリバーのアダプターを使うほうが多くなっていた。
ちなみにこのアダプターとSR-009Sとは相性が悪い。高域がキツく聞き疲れするのだ。RCAケーブルのグレードを下げるとそれなりに雰囲気よくは聞こえる。音の良し悪しとしては本末転倒である。

出番が少なくなったとは言え、KGSSHV自体には気にかかることがなくはない。
本当はこのアンプ、もっと音がいいのではないだろうかという懸念だ。
想像するには根拠もある。このアンプは、もともとバランス入力、いわゆるXLR入力端子しか付いていない。潔いと言える。
STAXの5極端子を利用する静電型ヘッドホンは、ヘッドホンの構造的に、音が出る振動幕の両面に電極がある。
その電極にプラスとマイナス、どちらの電気信号も送ることで、振動幕を前後に押し引きし、結果音が出るという構造だ。プラスマイナスどちらの信号も同等に扱うという意味で、バランス電送はSTAX方式のヘッドホンと相性がよいと言えるのではないだろうか。
ならは、バランス入力可能なSTAX方式アンプにはバランス出力をそのまま入力するのが道理。
この点がずっと引っかかっていた。
現用のDACはアンバランス、RCA出力専用なのだ。
DACのアナログRCA出力を、ノイトリックのXLR変換コネクタで変換、接続していた。
音は出るが、この形ではアンバランス入力していることになる。
値段と手間優先でコネクタで変換していたが、バランス駆動のアンプにバランス入力できていないのは地味にストレスになっていた。

バランス出力のあるDACを探してはいたが、なかなか決定的なものが見当たらない。
現行のDACはマイナーなオーディオメーカー、日本オーディオのDACで、もともと真空管出力のものを、メーカーにて製作者が最高になるように改修したものを使っている。
カットコアトランスを5つも使い、内部ケーブルも綿巻きケーブル。音を濁らせる抵抗の被覆を剥がし、出力アンプも自社製と言う。
なかなか確実にこれを超えると言えるものがない。

更にはケーブルの件もある。
RCAでしか機器を使ってこなかったので手持ちに満足なXLRケーブルがない。
ぼくが1番信頼しているRCAケーブルの製作者さんも体調から一時ケーブル製作をストップしていた。
もしもバランス出力DACを買っても繋ぐケーブルがない。
ま、ケーブルも無いしDAC更新は少し先しようと考えていた矢先、XLRケーブルが製作いただけることになった。
このタイミングを逃すと次に作っていただけるのがいつになるか分からない。
すぐに発注させていただくことにした。

ケーブルはあっという間に届いた。
届いたら使いたい。
ぼくは一旦DACの更新はあきらめ、トランスでアンバランス信号をバランス変換することを考えた。
具体的には、ヤフオクRCA→XLRへの変換トランスを見つけたので、それを購入することにしたのだ。
落札後すぐに商品は届いた。
すぐに件のXLRケーブルで繋いだ。
大正解だった。
ただの美音に写実性が宿ったようだ。
写実性がありながら、キツくならない。
音楽を聞きながら、ぼくは大満足だった。やはりバランス入力は正解だったと、高揚した頭で考えていた。


まあもちろん、精神衛生上の効果もあるのだろうが。

聞かれないリファレンスヘッドホンは幸せなのか?

f:id:koichirokoichiro:20220919182444j:image

リファレンスという言葉は「規範」と訳すべきだろうか。
まあ、とりあえずうちのヘッドホンの中でリファレンスと呼べるのはSONOMA MODEL ONEしかないだろう。
ダイナミック型ヘッドホンで1番それに近いのは平面駆動の木製ハウジング、LSAのHP1になるのだろう。
空間の描写、ダイナミックレンジ、音色の妥当性。どれをとっても優秀だと思う。
いかんせん音の立ち上がりと消えぎわの収束は静電型にかなわない。
静電型の中でもSTAXのSR-009SとSR-007Aは個人的にはクセがそれなりに有り、個人的にはリファレンスとは呼べない気がする。
HIFIMANのJADE2はリファレンスと呼ぶには弱い、shangri-la jrはまだ伸び代が有り、今の段階では未知数だ。

MODEL ONEほどリファレンスと呼ぶにふさわしいヘッドホンはないようだ。
DAC、アンプ、ヘッドホンまで一体型で他の機器を挟む余地がないのも、自由度はないが安心感はある。
ダイナミックレンジが静電型と思えないほど広く、とくに低域は他の静電型では聞いたことがないくらい速くキレが良い。
音の空間定位に関しても若干コンパクトだがキチンとあるがままに定位しているように感じる。

しかしぼくは、このMODEL ONEをほとんど使っていなかった。
音に関してはケチのつけようがないが、実際に使うのは他のヘッドホンで聞いていて、音源になにか問題があるように感じた場合に確認のために使うことがほとんど。確認が済めばまた元のヘッドホンに戻していた。
MODEL ONEは側圧が強く、それが原因かなと漠然と感じていた。
ただ、これだけ高額な製品に関わらず、電源がACアダプターであることには疑問を感じていて、なにか良いものが有れば使ってみたいと思っていた。
このACアダプターがクセモノで、既製品では24vの電源で良さそうなものがなかなか見つからない。

静電型ヘッドホン用のアダプターを発注した際に、ひさびさにウエストリバーのホームページを見た。
エストリバーのホームページに、掲示板がある。この掲示板はもちろんユーザーや、ウエストリバーに興味のあるかたも書き込めるのだが、ウエストリバーアンプを主宰される川西先生の主張や製作物された機器の試聴記もたくさん投稿されている。
ぼくはウエストリバーアンプ購入当初はこの掲示板をよく読んでいた。
スピーカーオーディオから離れ、ヘッドホンで音楽を聞くことがほとんどになってからは訪れることがなくなっていたのだ。

掲示板で興味がありそうな投稿を拾い読みしていると、依頼でACアダプターで電源供給するDAC用の電源を作成したとの投稿があった。
エストリバーは、アンプ専門かと思い込んでいたのだが、こんなものまで作っているのか。
ぼくはすぐに川西先生に連絡した。

約2週間後、ぼくの手元にSONOMA MODEL ONE用の電源ユニットが届いた。

すぐに繋いだ。

聞き始めてすぐに、聞こえる音楽がゆったり流れているように感じるのに気づいた。

今まで、楽器の音が耳から一定の距離を置いて整列するように聞こえていたのだが、近い楽器は近く、遠い楽器は遠く、それぞれの楽器までの距離が違うのがわかるような気がした。
なによりも、今までMODEL ONEで2、3曲聞くと聞くのをやめていたぼくが、その日、次の日とMODEL ONEのみで聞き通していたのだ。

個人的な最適解!ウエストリバー製STAXアダプター!

f:id:koichirokoichiro:20220910210535j:image

エストリバー=川西先生に静電型ヘッドホンについて相談した。

エストリバーは、ぼくが1番好きなアンプメーカーだ。
基本的にはスピーカー用のプリアンプとパワーアンプを製作されていて、ぼくも購入当時はスピーカーメインで音楽を聞いていたということもあり、プリアンプとパワーアンプを購入させていただいていた。
ヘッドホンメインで音楽をを聞くようになっても、ウエストリバーのプリアンプに付属の、ヘッドホン端子でダイナミック型のヘッドホンを聞いていれば充分満足できた。

欲というものは限りない。プリアンプに付属のヘッドホン端子は6.3mm。いわゆる標準端子、もちろんアンバランス接続になる。手持ちのヘッドホンには、バランス接続用のケーブルが付属しているものがある。バランス接続ならもっと音が良くなるのでは。
ぼくは主宰の川西先生に連絡してみた。あわよくばバランス出力付きのヘッドホンを特注できないかと考えたのだ。

答えは「ノー」だった。
川西先生の考えとしてはバランス接続でもアンバランス接続でもキチンとそこを踏まえて設計さえすれば音は変わらない。ましてやウエストリバーのプリアンプ付属のヘッドホン端子よりも音のよいものは作れないということだった。
潔い回答だった。
残念な気持ちもあったが、ぼくは散財しなくてよくなった。

それから半年ほど経った。
ダイナミック型のヘッドホンアンプはウエストリバーのプリアンプで満足して聞いていたが、ぼくの興味は静電型のヘッドホンに移っていた。
音の実在感やダイナミックレンジ、低音の音圧などはダイナミックタイプのヘッドホンに劣るが、静電型の理論上、はるかに軽い振動板が出す自然な音の立ち上がりと引き際。それに付随する情報量は個人的に可能性を感じる部分だ。

今まで試した静電型アンプは4機種。
HIFIMANのJADE2用アンプ、STAXの旧世代ソリッドステートアンプSRM-727A、イシノラボの特注真空管式、ガレージメーカー製のKGSSHV CARBONだ。

この中で、KGSSHV CARBONは個人的に素晴らしいアンプだと思う。試した中では段違いに好きだ。
頭の周りの空間に、音がキレイに浮かぶ。
音色もこの世のものと思えない美音だ。
欠点もある。反対に言うと美しすぎるとも言える。ぼく個人としては、それはそれで楽しんで聞いているが、写実性を考えるとダイナミックタイプに明らかに劣るように感じるのも事実だ。
KGSSHV CARBONは海外では非常に評価が高いアンプで、これがダメならもう静電型ヘッドホンの限界なのだろうかともぼくは考えていた。

最後の最後に、ほとんどダメ元で川西先生に聞いてみた。
「静電型ヘッドホン用のアンプは製作できないでしょうか?」
その日に返事が来た。
「アンプは無理だがパワーアンプの出力をSTAX用に変換するアダプターなら作ることができるかもしれない」
ぼくにとって予想外の返事が返ってきた。
翌日には製作するための概算の予算の連絡があった。想像していたよりも安い。
ぼくはその日のうちにオーダーすることを決めてメールを送った。

振り込みしてから2週間ほどでSTAXアダプターはぼくの手元に届いた。
接続、一聴して顔に笑みがこぼれたのがわかった。
当たり前かもしれないがウエストリバーの音がするのだ。
情報量が多く、解像度が高いのに輪郭がスッキリして自然な音。ぼく個人はウエストリバーアンプの音をそんな風に捉えている。
その音を聞いて、ぼくはやっと静電型ヘッドホンの真価が理解できた気がした。

分解能の鬼!HIFIMAN Shangri-la jr!!

f:id:koichirokoichiro:20220826201753j:image

時系列で書くならウエストリバーで作っていただいた静電型ヘッドホンアダプター、ES-1のことを書くべきなのかもしれないが、その後、すぐに到着した静電型ヘッドホン、HIFIMANのShangri-la jrのレビューを先にしておこうと思う。

購入した経緯から書く。
一年と少し前、ぼくはHIFIMANのJADE2を新品購入した。試聴して購入したわけだ。いまでも気に入っている。
このJADE2がぼくにとってはじめての静電型ヘッドホンだ。通常のダイナミック型のヘッドホンから考えるといささか光学に感じるが、静電型ヘッドホンというカテゴリーのなかJADE2はエントリークラスとも考えられる。
そのエントリークラスでもこれだけの音を出してくれる静電型。ぼくはさらに上のクラスを聞いてみたくなった。

そこからはこのブログにも書いたとおり。
STAXのSR-L700とSRM-727A、SR-009S、SR-007A。アンプはイシノラボとKGSSHV CARBONを買った。ほんの一年足らずのできごとである。
STAXのヘッドホンはそれぞれに素晴らしい音だ。音色に関して言えばいま所持している2機種、SR-009SとSR-007Aで満足している。
ではなぜ追加購入するにせよSTAXの上位、SR-X9000にしなかったのか。
音色ではなく、サウンドステージ。音場なのである。
HIFIMANのヘッドホンをたくさん使ったことがあるわけではないが、今まで使った3機種、DEVA、ANANDA、JADE2の音場は、頭の全周囲に距離を置いて定位するように聞こえる。
それを期待してSTAXの上位機種を使ってみた。
情報量は上がり解像度は高く音色のツヤもすばらしい。
音場に関しては、奥行き方向、前後感についてはすばらしいのだが、横方向の距離感については若干曖昧に聞こえるのだ。

もしかするとSTAXのSR-X9000の音場が好みに合うかもしれない。それも考えた。
それに静電型で今の旬なら、AUDEZEのCRBNもある。
なかなか試聴に行く余裕もないいまの自分の状況で、ネットのレビューを読む限り、ぼくが好む音場については、どうもHIFIMANのヘッドホン独特のものなのだろうと見当をつけた。

売店に問い合わせしてみた。
国内在庫がラスト一点だと言う。その言葉はぼくの背中を押した。

Shangri-la jrがお盆明けて一週間後に到着した。ぼくはいつになく興奮していた。
同価格帯のヘッドホンとしてはSTAXのSR-009Sをすでに所持している。
SR-009Sは中古購入だ。購入時にそこまでの高揚感はなかったと思う。
ただし中古品の場合、販売店でチェック済みであることである意味安心して購入できる。新品の場合は未開封で送られてくる。
ぼくは新品の方が安心なように思っていた時期もある。
同じHIFIMANのJADE2の新品購入の際、不具合でアンプともども交換の憂き目にあった。
左右の音量が違ったのだ。こうなるとHIFIMANご自慢の音場の立体感は全くでない。
新品だからといってなかなか安心できないなと、身をもって体験したのだ。
ましてや今回のShangri-la jrは国内在庫がもうない。
なにか不具合があっても交換というわけにはいかない。慎重に梱包から取り出し静電型ヘッドホン用の5ピンをアンプに差し込んだ。
とりあえずは同じメーカーのアンプのほうが安心だろう。ぼくはJADE2のアンプで聞き始めた。

心配は杞憂だった。
左右の音量差もなく、格下のJADE2のアンプでもすばらしい音だ。
抜群に情報量が多く解像度が高い。描く線は極限まで細く太くツヤのある音が好きと言われる方には不向きだろう。
ぼくの個人的な好みは、情報量優先、分離優先のところがある。細いがキツくは感じないのでかなりツボにハマった音である。

特筆すべきは定位感だろう。
いわゆる音場が広く前後左右上下と、もしかすると誇張感を感じる人もいるだろうが、かなりピンポイントで定位する。
音源までの距離も広々として、俯瞰して見る状態に近い気がする。
ボーカルがそばで歌って欲しいと言う旨にはむかないのかもしれない。
このあたりも、同じHIFIMANのJADE2に似ていると言えなくもない。JADE2から正当進化している場所なのだろう。
JADE2と比較すると、個人的には負けている部分はまったく感じない。
反対にらShangri-la jrを聞いてからJADE2を聞くと、今まで鮮烈に感じていたJADE2の音が、何枚もベールをかぶった音に聞こえるようになった。

それでは、静電型ヘッドホンの同クラス、STAXのSR-009Sとの比較はどうだろうか。
情報量は同等、解像度はShangri-la jrのほうが高いように聞こえる。
これはメーカーによる音作りのせいだろう。たしかに解像度はShangri-la jrのほうが高く聞こえるのだがその反面、余韻が少なくドライだ。
ボーカルのツヤはSR-009Sの独壇場と言える。
音作りの違いは音場の違いにもあらわれている。
移動感は2機種ともすばらしいのだが、音が空間に点在して前後左右上下にキレイに間隔を置いてピンポイントに定位するさまは、やはりHIFIMANのヘッドホンならではなのだろう。

SR-009Sは音場自体が狭いとは感じないが、前後方向に大きく、左右方向は若干狭い楕円形に感じる。ボーカルも近い。音の定位も空間にピンポイントとはいかないようだ。

個人的には、Shangri-la jrは音楽を非常に客観的に聞かせてくれる気がする。いわば突き放したクールな音。
SR-009Sは聞かせどころをうまく提示してくれ、音楽に引き込むような音と言えそうだ。

最後にビルドクオリティとつけ心地についても触れておこう。
HIFIMANのヘッドホンについては、音はいいけど作りがね、といった意見が多いように思う。
ぼく個人としては、HIFIMAN製品に特に悪い印象はない。
デザインなんかを含めるとSTAXなんかもどっこいどっこいに感じる。
SR-X9000はまだ実物を見たことがないが、ネットで見る限りずいぶん垢抜けたなといった印象。
SR-009SやSR-007Aのデザインは日本的と言うか若干の古さを感じなくもない。
このあたり、デザインはShangri-la jrは新しさを感じる。
重量もSR-009S比で軽く、装着感も良い。個人的にヘッドバンドは、HIFIMANのこのタイプが1番気に入っている。
ネガティブな要素としては、工作精度の問題かヒンジがキシむような音を立てることがある。
あとは、イヤーパッドがメッシュタイプで本革でないことか。
これは音づくりの一環であるだろうから難しいだろうが、高級ヘッドホンにはやはり本革が合うと思う。本革の肌触りも好きなので少し残念だ。

まあヘッドホン単体で作りが定価約50万円のクオリティがあるかと言われるとどうだろう。その人その人の判断で、としか言いようはないが、STAX製品と比較して個人的には特に悪いようには思えない。
群雄割拠の高級ダイナミック型ヘッドホンと違い、静電型ヘッドホンの世界はニッチなので、外観に関してはぼくの感覚が麻痺しているのかもしれないが。
なんにせよ、他の機種を考えても音に関しては代わるものがない。手に入れることができ非常に満足している。