Headphone Junky

歴だけはそこそこあるホムシアオーマニの偏ったお話

香り高い?ZMF AUTEUR試聴記

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昨年末に届いたもうひとつのヘッドホンがZMF AUTEURだ。

 

以前の記事にも書いたが、平面駆動と静電型のヘッドホンばかり買っているぼくにとって、久しぶりのダイナミック型のヘッドホンになる。

ダイナミック型のヘッドホンで気にかかるのは、高域に感じる歪みのような違和感だ。理由ははっきり分からない。もしかしたらぼくの耳のせいかもしれない。高域にエッジが立ちすぎるというか、歪んでいるように感じる機種が大半なのだ。


平面駆動や静電型では使用機器のノイズ対策さえすれば問題にならないので、相性のようなものなのかもしれない。


それなりの数のヘッドホンを試聴しているが、ダイナミック型についてこの違和感は、ほとんどの機種で感じられる。
もしかすると、試聴環境のせいかもしれない。家の環境なら、と考えないこともない。しかし、違和感を感じるものを購入する冒険は、する気にならないの。
個人的に、試聴してこれならいける、と感じたダイナミック型のヘッドホンは、ゼンハイザーのHD800S、HD820S、オーディオテクニカのADX5000くらいか。

 

さあ。手元にきたこのZMF AUTEURを頭にかぶる。装着感はすばらしい。側圧も適正で耳を完全に覆う大型、肉厚のイヤーパッドが気持ちいい。ケーブルをアンプに接続し、音楽を再生、ボリュームを上げる。
歪むな、歪むな。祈るようにつぶやく。
音が出た。ひどい音が聞こえた。
具体的には、まったくメリハリがない、ひとことで表現すると「眠い音」だ。
情報量が少なく、音を解像できない。
中古購入だが、もしかすると、もうかなり長い間使われてなかったのかもしれない。
ただ、心配していた高域の歪みのようなエッジは感じられない。
とりあえず、一日中鳴らしっぱなしにした。
年末休みだ。音楽三昧もいい。
10時間くらい使ったところで音が変わった。
メリハリが出て、奥行きも出る。解像度も高いが繊細で柔らかい。
聞き疲れしなさそうな音なのに高分解能という、ありそうでない両立をしているようだ。

音色も、楽器それぞれの質感を色とりどりに感じられる。

木製のハウジングだけれども、あまりそれを意識させない、うまい設計のようだ。
音場についてもそれなりの広さを感じる。
面白いのは音場の形だ。
通常音場は、自分を中心に据え、音が自分の周りを取り囲むように広がっているような気がする。
AUTEURの音場は、周りを取り囲むようなというより、球形に感じるのだ。不思議な感覚だ。今までに感じたことのない感覚と言っていいだろう。
これは多分字面で説明してもなかなか分かっていただけないだろう。もどかしいが、仕方ない。
実際に聞いてみるだけの価値はあると思う。
まあ、試聴できるところもあまりないだろうが。

 

AUTEURは音に関しての気に入り具合では、前回の記事で常用していると書いた、ORIGINAL VOICE 972proと同じくらい気に入っている。
さらに加えてAUTEURは、ハウジングの仕上げが格別で、実際に手に取ると写真などでみるよりも美しく感じてニヤけてしまう。そんな所有感もいい。
では、なぜ常用は972proなのだろうか。
聞いた話ではあるが、海外製のヘッドホンではしばしばあることらしい。このAUTEUR、本体から香水のような激しい香りが漂っているのだ。中古であるにも関わらずだ。はじめぼくは、思わず自分の鼻を疑った。確信したときには唖然とした。
そこに気付いてしまうと、正直、それだけはいただけないと思ってしまうのだ。