Headphone Junky

歴だけはそこそこあるホムシアオーマニの偏ったお話

昔話。ETHER Cに出会う。

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購入したヘッドホン2本の感想はまたおいおい。
本日は昔話をひとつ。

もう何年前だろうか。愛用のヘッドホン、FINAL AUDIO DESIGN(現FINAL)の調子が悪くなった。中堅モデルのPANDRA HOPEⅥ(現SONOROUSⅥ)だ。
合皮のヘッドバンドとイヤーパッドは破れ、接続ケーブルのヘッドホン側の根もとで断線気味になった。一応は聞けるのだが、体勢を変えると音が出なかったりする。本末転倒、音楽を聞くたびにストレスがたまる。

ここはひとつ買い替えよう。
意を決し、有り金をかき集めて大阪、難波まで試聴に出かけることにした。
PANDRA HOPEⅥの前は、GRADOのPS500を使用し、気にはいってはいたのだが、音漏れで家人にクレームをつけられ、密閉型に転向した経緯がある。
そういうわけで、前情報として考えていた候補は、すべて密閉型ヘッドホンだった。

お店について、値段順に聞いていった。
出せる値段MAXはTH900だ。

TAGO STUDIO T3-01を聞く。
いい。自然。粗も感じない聞きやすい音。音は近め、音場の展開は狭いが窮屈ではない。
若干音の色数が少なく感じる。
定価は安い。中古でもあまり変わらない価格。
買うなら新品か。

DENON AH-D5200
これだけ据え置きアンプにつながっていた。
いい。自然さ、というかエッジのなさはT3-01には負けるが、とくに不自然とは感じない。
ドンシャリ気味のようだが聞き心地がよい。音数が増えてカラフル。
DENONのこのシリーズでこの機種だけ3.5mmジャック。変換が要るため精神衛生上よくなさそう。

DENON AH-D7200
D5200よりもHIFI調。
より締まった低域、さらに増える色数。定位する音の像の密度が上がったように感じる。

AKG K872
かちっとした音像。若干高域の空気感が少なく感じる。
音色の色数は多いが少し平板か。
DAPからの再生で鳴らしきれてないと思うが、購入するには冒険。

FOSTEX TH900
すべての音像が強く、強ドンシャリに感じる。激しくてクラクラする感じ。高域に若干だが歪みを感じるか。
音場のプレゼンテーションはすばらしい。
漆黒から音が飛び出してくるようだ。

このなかで好みだったのはDENON D5200か。まあ上位機はDAPで聞いたので、D7200を買っておけば問題ないか。
店を歩き回りながらそんなことを考える。
ぼくの足は、性懲りも無く、買えもしない値段帯のヘッドホンのゾーンのほうに向いた。

一台のヘッドホンと目が合った。
定価20万円超のMR.SPEAKERS ETHER Cだ。
当時、もともとホームシアターとスピーカーオーディオをメインにしていたぼくは、そのメーカーを知らなかった。
MR.SPEAKERSという変わったメーカーの名前も、どう考えても二流メーカーのようだ。
最近は便利なものだ。なにか分からないことが有ってもスマホで検索すればわかることのほうが多い。
ほんの2、3分検索しただけで、その謎メーカーの情報が手に入った。
もともとはFOSTEXの平面駆動振動板を使ったヘッドホンを改造して販売していたガレージメーカーだったこと、目の前にあるETHER Cは、他社製品の改造から一歩進んで、すべてをはじめから設計して作られた処女作であること、作る平面振動板は、作りがかなり他社と違うことなどが分かった。

聞いてみるか。
二流メーカーではなさそうだ。
予算オーバーに関わらず、ぼくは店員さんにガラスケースの向こうのヘッドホンの試聴を、申し出ていた。

結局この20万円超のヘッドホンも手持ちのDAPで聞くことになった。まあこちらも予算オーバーのものを聞かせていただくのだ。文句は言えまい。
平面駆動のヘッドホンは、鳴らしにくいものが多い。ETHER Cもその例に漏れず、つないだDAPの音量はマックスだが、思うような音量では鳴ってくれない。
あとは想像力で補おう。

うん。自然だ。さっきまで聞いて、一番自然と思ったT3-01よりもさらに高域が自然に耳に入ってくる。
特にアコースティックギターの弦の響きが突っ張らず、染み込んでくる。
さっき調べたサイトに書いてあった。平面駆動では低域が問題になるケースが多いらしい。
音量が低いため、分かりにくいが、個人的な好みでは問題なさそうに聞こえる。
T3-01は、自然な出音だとは思ったが、音色の色数が少なく感じた。しかし、ETHER Cの音はカラフルに感じ、楽器の音色が、よりその楽器らしく感じられる。

好みとしては、どストライクだ。どうしよう。予算的にはあきらかにオーバーしている。
とりあえず、さっきまで試聴したヘッドホンをもう一巡聞き、それらで満足できるか自分に聞いてみた。

答えは分かっていた。
ぼくは一旦家に帰った。
2日後ぼくは、なんとか用立てた現金を握りしめて、お店に向かうことになった。