SR-L700&SRM-727A導入記
新しいSTAXを買った。
発端はこうだ。
愛用のプロジェクターが故障した。
最新式のものではないけれど、気に入っている。修理に出すことにはしたが、保証期間を過ぎたプロジェクターの修理代は、高額になることが多い。依頼前に、ある程度は捻出しておかなくてはならないだろう。
「このくらいの値段までなら修理してもらおう」
そんな金額を、なんとか手持ちのオーディオアクセサリーを売り飛ばして捻出した。
修理先からの回答は、
「症状再現せず。怪しい部品のみ交換。修理代無料」
十日ほどかかって帰ってきたプロジェクターは、完全に治っていた。
無償修理となって、宙に浮いた修理代。気が大きくなったぼくは、こう思った。
「気になってたヘッドホンを買ってみよう」
小金を持ったらすぐ使おうとする。
バカの発想である。
まあいい。先に進めよう。
気になっているヘッドホンとは、HEDD PHONE だ。(HEAD PHONEのミスタイプではない)
以前東京行きのついでに、秋葉原のeイヤホンでHIFIMANのDEVAを購入した際、本当は、フジヤエービックで HEDD PHONEを試聴、購入する予定だったのである。
このHEDD PHONE、ネットのレビューを見ていると、とてつもない解像度とか、平面駆動なのに音が太いとか、低音があり余るくらい出るなど、どちらかというとスッキリ細身の音のJADE2と使い分けるのに非常に良さそうなのだ。
そのときは、結果的にDEVAを気に入って即買い、フジヤエービックには行くことすらしなかった。
それがHEDD PHONE発売当時のことだ。その当時なら考えられなかったことだが、このHEDD PHONE 、今なら中古をそれなりに見掛けることがある。ただし、試聴するなら東京、中野まで行かなければならない。
引っ越しとともに転職したばかりで何もかも慣れない今、東京まで足を伸ばす気にはとてもなれない。
まあ、じゃあ不見転で買うかぁ、と割り切れればよかったんだが、まあ待てと心の声も聞こえる。試聴したことがあるなかでも俎上に上がる機種もあるんじゃないか。
筆頭はゼンハイザーのHD800Sだ。
ヘッドホンのリファレンスとして有名なこの機種も、中古か平行輸入品ならなんとか手が届く。
HIFIMANのARYAも、試聴ではもうひとつだったけれど、自宅でじっくり聞けば、よいのかもしれない。
予算的には、ずっと以前に試聴して好印象だったDENONのAH-D9200かD7200もターゲットに入る。
同じくTAGOのT3-01もいいかもしれない。
思いながら手持ちのSTAX、SR-202で音楽を聞く。
…良いな。
やっぱり良い。良いと言うと語弊があるなら好い(いい)んだ。コレが。
前回、ヨドバシでSTAX製品を試聴したときには、どれを聞いてもなんか曇ったような音で、結果JADE2を購入して帰った。
改めて自宅でゆったり聞くSTAXは、音がリラックスして自然に耳に入ってくる。
現行機種や上位機種がこれより悪いなんてことないんじゃないか?
つらつらと考える。
STAXのSR-202も、同じ静電式と言っても、HIFIMANのJADE 2とはまったく違う音だ。
当初の目的、JADE2と違う傾向のヘッドホンを買う、と言う目的にも、かなうのかもしれない。
とりあえず、STAXマニアの知り合いに聞いてみよう。
結果、何点かオススメをあげてもらうことになった。
彼に聞く前に、素人考えで思っていたのは、こうだ。
静電型のヘッドホンは専用のアンプが必要。規格は JADE2用も同じ。JADE2のアンプを流用するならSR-007Aくらいなら中古で手が届きそうだ。
しかし、知人からは、まず、そもそもSTAXのヘッドホンに社外アンプは、お勧めしないとのことだった。
また、SR-007Aはソースを選ぶ、ということも意見としていただいた。
個人的によく聞くジャンルはロック、ポップスがメイン、小編成のクラシックを少々といったところ。ということは、やはりSR-007Aはむずかしいか。
ぼくの予算内での知人のお勧めは、SR-L700mk2だった。この機種なら現行品でもあり、ジャンルを問わずに鳴らしてくれるとのことだった。
手持ちのSTAX専用アンプ、SRM-252との組み合わせでもとりあえずそれなりに鳴るから、それでしばらく聞いて、アンプはまた予算ができたらグレードアップしすればいいんじゃないかともアドバイスいただいた。
有った。さすがに現行品、中古と言え、高い。
これを買うとやはりSTAX専用アンプの更新はムリだ。
悩みつつも別のサイトでも探す。
某サイトに、現行のL700mk2の前のモデル、L700を発見した。
調べると、mk2との違いは、筐体の材質がプラからアルミ製に変更され、ケーブルがリケーブル可能になったことのようだ。肝心要の発音体には、大きな差はないように見受けられた。
これなら、旧モデルということもあり、mk2に比べるとだいぶ安くなっている。なんとかアンプにも資金がまわせそうだ。
よし決めた。これで行こう。
ヘッドホンとアンプは、ポチった翌日にはぼくの手元に到着していた。
STAXのミドルハイクラスであるSR-L700に組み合わせるアンプとしては、SRM-727Aを選んだ。
真空管で鳴らすSTAXに憧れは有ったが、試聴時の印象からしてあまり良い印象がなかったこと、727Aならボリューム回路をパスできることが決め手となった。
もっとも、予算を上げた現行品なら、真空管式でもボリュームはパスできる。まあこれは、あくまでも予算内での選択肢だ。
手元に来たL700&727Aには、かなり手こずらされることになった。
透明度が高く、繊細な音なのは評判通りだ。
一方ですこしピーキーなところもある。ボリュームをパスせずに使用すると、このあたりは緩和されるが、情報量やキレとトレードオフになる。個人的にはボリュームパスはマストだ。
電源ケーブル、RCAケーブル、アース接続など、数日間朝から晩まで試行錯誤の連続になった。
繊細さを維持しながらピーキーさを抑えるのには、本当に苦労した。
結果ぼくは、透明感のある響きに、体を包み込まれるような美音を得ることに成功したのである。