機材整理の巻
引っ越しを機に、機材の整理をした。
こんどの家は前の家ほど広くない。
シアターに使う部屋自体は、四畳半から六畳へ。すこし広くなったが、マンガや本など、別の部屋に置いていたもろもろをこの部屋にすべて詰めこまなければならない。本は1000冊くらいは手放した。
ヘッドホン関連も、整理せざるを得ない分野だ。まあしかし、何もなくともさすがにヘッドホン6本は多いだろう。
密閉型は断腸の思いでETHER Cに一本化することにした。
密閉型と言えば、最近手に入れたAEONもすばらしいヘッドホンで、リファレンス的に使っていたのだが、迷いに迷って売りに出した。
困ったのは開放型だ。実は最近、静電型に興味が出てきたので、試しにSTAXのかなり旧いエントリーモデルをジャンク扱いで購入していた。
これがよいのだ。
音数的にはANANDAやETHER Cのほうが断然多いし、解像感も高い。レンジも広いと思う。
なぜだろう。STAXはそんなことと別に、聴き心地がいいんだ。これが。
エントリーモデルのせいか、巷で美音美音と言われるような音には聞こえない。ただ、スッと耳に入ってくるというか、とにかく耳馴染みがよく感じたのだ。
コレがよく言われる、音を聞くか、音楽を聞くかの違いなのだろうか。
まあ、なんにせよ、個人的に重要なのは、いわゆるHIFIに聞こえることより、気持ちよく聞けるが大事なのだ。
決めた。静電型を軸に、試聴して決めよう。
関西在住のぼくの試聴エリアは梅田界隈だ。よっぽど足を伸ばして日本橋か。
とりあえずeイヤホンの梅田に行く。
あいにくこちらには静電型のヘッドホンはなかった。
ただし、気に入っているHIFIMANのANANDAの上級機、ARYAと価格破壊という噂のHE-400SEは聞けた。
評判通り、ARYAはANANDAを柔らかくしたような音に感じる。情報量も多い。ただ、聞き様によっては少しぼんやりしているようにも聞こえる。
HE-400SEはこの価格にしてはいいんだけど、ANANDAとの間には超えられない壁があるように思う。
個人的にはANANDAのコスパはずば抜けていると感じる。
ここで登場するのがゼンハイザーのHD800Sだ。
HD800Sに関しては、ヘッドホンマニアの中でリファレンスとして君臨するヘッドホンといった印象で、キワモノ好きとしてはあまり興味がなかった。大昔、はじめてヘッドホンを試聴に行った際にみんながリファレンスにしているヘッドホンとはどんなもんかと、ほんの少しだけ聞いたことがあるくらいで真剣に聞いたことはなかった。そのとき買ったのがGRADOのPS500で、HD800Sは、良いには良いけど高過ぎる。そんな感想しかなかった。
しかし時は過ぎ、静電型を専用のアンプ込みで買おうとしている今なら買える。
意を決して試聴機をかぶると、ものすごくよいのだ。
まず、いままで平面駆動や静電型でしか聞いたことがない滑らかで速い音。
そして的確な位置に奥行きを持って定位する音場。
ああ。これが、ヘッドホンのリファレンスなんだなと、納得せざるをえない音がそこにあった。
HD800Sに魂を抜かれてとりあえずその日は帰った。
HD800Sはすばらしい。でも、ぼくとしては、本命視していた静電型、STAXを聞いてから決めたかったのだ。
翌日、ヨドバシ梅田でSTAXと対峙している自分がいた。
さて、ヨドバシ梅田のヘッドホン売り場はすごい。
環境はどうあれ、なんと、STAXのイヤースピーカー(ヘッドホン)現行全機種が試聴できるのだ。(ポータブル除く)
SR-L300、SR-L500mk2、SR-L700mk2、SR-007A、SR-009S。
夢のような環境だ。
ただ、惜しむらくは、L500mk2以上の機種に関してはドライバが真空管式であること。(今は違うかもしれないが)
このせいかもしれないが、どうもぼくの耳には眠い音に聞こえてしまう。もしかしたら電源環境も良くないのかもしれない。
何度機種を替えて試聴しただろう。
ぼくは楽しみにしていただけに肩を落とさざるをえなかった。
ではセカンドオピニオンだ。eイヤホンで好印象だったHD800Sは、もちろんヨド梅にもあった。
しかも試聴機が2台。
密閉型HD820を入れると4台の試聴機があった。さすがヨドバシ。力の入れかたが違う。
ぼくは800Sを頭にかぶった。
「あれ?」
疑問符が浮かんだ。
あのリファレンスの定番、ヘッドホンの金字塔、HD800Sが良く聞こえないのだ。
具体的に書くと、高域にすこしくまどりを感じ、本当にすこしだけだが突っ張るような印象を覚えるのだ。
試聴機の異常かと思い、もう一台の試聴機を聞いても同じことだった。
昨日とは試聴環境、アンプもちがうのだから当たり前かもしれないが、個人的にはかなりの高額な機器だ。納得しないで買うことはできない。
さあどうする。
頭を冷やすために売り場を一周する。
念のために他の機種も聞いてみよう。
FOSTEX TH-610、現有愛機HIFIMAN ANANDA、etc.etc…
あれ?
ガラスのショーケースの中にど本命発見!
HIFIMAN JADE2じゃん!!
悩みすぎて閉店間近だったけど、店員さんに言って試聴させていただいた。
………よいな。
ANANDAをより繊細に、柔らかくしたような音。
「あ、あの、コレ。買いますぅ」
引っ越し後でないと聞けないにも関わらず、持ち帰った。もちろんクソ重いアンプも込みだ。
電車の中で、ズッシリとした重みを感じたウデは、満足そうだった。