Headphone Junky

歴だけはそこそこあるホムシアオーマニの偏ったお話

「そっけないけど手が伸びる」AEON FLOWがやってきた!

かつてMr.SPEAKERSというヘッドホンメーカーがありました。と言っても現在もその会社は存続していて、現在は創業者、ダン・クラークの名前をとってDanClarkAUDIOと社名変更されています。

このMr.SPEAKERSは、もともとフォステクス製の平面振動板ヘッドホンを改造して販売するガレージメーカーだったのですが、それに飽きたらず、すべてオリジナルのヘッドホンを開発、販売するようになりました。そのオリジナルの最初期のモデルが同社フラッグシップモデルのETHERシリーズです。

このモデルはマイナーチェンジを繰り返しながらいまだに販売されています。最近のモデルサイクルの速いヘッドホン業界では、かなり息の長いモデルなのかもしれません。

さて、このETHERシリーズは上々の評価を得、日本での販売価格が、20万円超えの高級機種でありながらアメリカ中心にかなり売れたようです。ぼくも密閉型のETHER Cをメイン機として愛用しています。

フラッグシップモデルで一定の評価、販売実績を得ると、次の一手として、もう少し一般的に買いやすい、下位のモデルを開発、発売するのがメーカーの定石と言ってもいいでしょう。

上位機種の技術を、うまくコストダウンして採用することで、上級機種のエッセンスを凝縮した素晴らしいモデルが、安価でできる可能性があります。

というわけで、Mr.SPEAKERSもその例に漏れずETHERシリーズの約半額のモデルを開発しました。

それが今回ぼくが購入したAEON FLOWです。

ぼくが買ったのは密閉型ですが、開放型もあります。

 

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上級機を持っているのに下級機、しかも同じ密閉型を購入するなんて、なぜ?と思われるかたもいらっしゃるかもしれません。

 


ETHER Cは購入してから数年経ちますが、いまだに出音には飽きることがありません。またいつかレビューできればと思いますが、ETHER Cの特筆すべきところは、ソースの情報は余すことなくひき出しながら、うまく聞きやすくまとめ上げてくれるといった印象でしょうか。

原音に忠実とは言えないかもしれませんが、そのあたりの塩梅が絶妙で、個人的には手放せないヘッドホンです。

さて、AEON FLOWはそのETHER Cと同じメーカーの作る、下位機種です。

上位機種を持っているのに下位機種をさらに買い足す意味はあるのだろうか。ぼくも以前はそう思っていました。

ただ、ETHER Cはヘッドホン本体が大きく、カジュアルに聞きたいときに出してくるには躊躇してしまうサイズです。

ETHER Cの出音自体は気に入っているので、もう少し軽く、気分も軽く使える気軽に使えそうなAEON FLOWを、今回購入することにしました。

 


届いたAEON FLOWを見ると、購入したのはその点では正解でした。本体自身の大きさや重さはそこまで小型軽量ではないものの、形と耳周りのフィット感がETHER Cとはまったく違い、軽快です。

これなら、ちょっと気軽に使いたいときによさそうです。

 


びっくりしたのは出てきた音です。

同じメーカーのETHER Cの下位機種ですから、同じような音の傾向で、スケールダウンしたような音が出てくるのだろうと思いこんでいましたが、まったく違います。

まず、ぼくが手に入れたのは密閉型なのですが、密閉型特有の響きが抑えられているのか、まるで開放型のように音抜けがよく感じます。

 


ETHER Cの場合は、密閉型の響きを反対に利用することで重奏間や響きの心地よさを演出していたように思うのですが、AEON FLOWの場合はどうやってかはわかりませんが、ほぼ響かないような気がします。無理に響きを抑えているような印象もなく、開放型のように抜けがよいように感じます。

ぼくの持っている開放型のヘッドホン、OPPOのPM-2のほうがどちらかというと抜け感は悪く、響きも多いようです。

これには正直驚きました。

音の印象としては平面型のイメージ通り、上から下までスムーズに出てくる感じで、特に弱い帯域も無さそうです。

ネットでは、低域が弱いという評判も見ますが、個人的には盛った低音は苦手なので、ちょうどいいと思います。

音の傾向としては、評判どおり、すこしそっけない感じもしますが、必要な音は全部出ているのではと思いました。ETHER Cのほうは、どちらかというと演出系と感じているのですが、その、演出をなくすとこんな感じになるのかなと想像します。

そっけないと言っても楽しめない音楽性皆無な音かと言われると全くそんなことはなく、たとえばFOSTEXのT60RPの出音ほどリファレンスてきな、ドライで厳しい音といった訳ではないです。

リファレンス的とかモニター的とかというよりも、素直な音というのがいいのかもしれません。

音の出どころなどもHIFIMANのANANDAと同じレベルではっきりしますが、包囲される音との距離感は、もうすこし近めに感じます。

とりあえず言えることは、ぼくの持っているのヘッドホンの中では、とりわけ分析的であることは間違いないようです。

 


そのせいか、AEON FLOWはケーブルの違いもよく出します。

ETHER Cの場合はRCAケーブルなどを交換すると、ケーブルの違いは充分わかるんですが、ケーブルの良し悪しはうまく丸めこんでうまく聞かせてくれるのですが、AEON FLOWでは、かなり大きな差が出て、合わないと聞く気にさえならなくなります。

試行錯誤してみましたが、最終的にはいままでの定番のケーブルが一番合っているようで、ほかのヘッドホンの場合はいろいろとケーブルを交換し、ケーブルの個性を楽しむことも可能でしたが、AEON FLOWでは、個性を楽しむというよりは、ケーブルの粗探しみたいになってしまいそうです。それもひとえに素直な音の証拠なのかもしれません。

 


ある意味そっけなく素直。まったく個性的な音とは言えないと思うAEON  FLOWが、うちに来て約ひと月経ちます。ぼく個人としては、オーディオにそれなりの個性を求めていると思っていたのですが、最近、何も考えずに音楽を聞こうと、ヘッドホン置き場に手を伸ばすと、気がつくとAEON FLOWを手に取っていることが多い気がします。