日本にひとつ(かもしれない)ヘッドホンを購入した話し
すばらしい性能(そう、あそこまで行くと、音質というより性能だろう)を誇るSONOMA MODEL ONEだが、個人的に合わない部分もある。
まず、装着感だ。
これはいわゆる仕事道具として設計された経緯から、軽くはあっても、リラックスしてリスニングしたいぼくにとっては少々つらいところだ。
イヤーパッドが、頭の左右からかなりの側圧で押しつけられる。
耳も窮屈だ。
そしてもうひとつの欠点は、イヤーパッドが少しでもズレると音が変わってしまうこと。
反対に言うと、この問題のせいで頭に固定しなければならず、側圧を強めにしているのかもしれないなと、邪推してみたりもする。
と言う訳で、なにかリスニング向けで、代わりのヘッドホンを探していた。
条件は長時間使用できること。なんというか、あまり大袈裟でないものがいいだろう。
その条件で、ネットショップやオークションをつらつらと眺める。
ひとつのヘッドホンが目についた。KENNERTONのODINだ。
KENNERTONはロシアのブランドで、一貫して木製のハウジングを使ったヘッドホンシリーズをラインナップしている。
ただ、日本では売れないのだろう、日本の代理店の扱いは2機種のみ。そのうちODINは平面駆動の重厚長大路線のものだ。重さは700g弱、かなりのヘビー級だ。
待て待て、条件には合わないだろう。
見なかったことにして画面をスクロールした。
目についたことがきっかけで、頭にはKENNERTONがある。とりあえずKENNERTONのヘッドホンを検索してみた。
すると某オークションで、見たことのないメーカーのヘッドホンが引っかかってきた。
LSA社のHP-1というヘッドホンだ。
出品者の商品説明によると、KENNERTONのODINの振動板を、軽く装着感のよい上級機の筐体に取り付けたとあった。
要するにLSAというアメリカの会社が、KENNERTONに作ってもらった、OEM商品ということなのだろう。
あらためてKENNERTONのHPを検索した。
日本ではマイナーなKENNERTONだが、本国のネットショップを見ると、平面駆動、グラフィン振動板、密閉、開放etc…、かな豊富なバリエーションの製品ラインナップだ。
どうもこの中から掛け合わせてOEMのモデルを作っているようだ。
そしてそのHP-1は、ODINの670gから485gへ軽量化されている。
この重量なら。気軽に使えるギリギリのラインかもしれない。
KENNERTONの製品は日本では情報が少ないが、探すと、個人輸入でKENNERTONの最上位モデルを手に入れたかたのブログを発見することができた。
ツイッターでも同じかたがKENNERTONについてツイートしているのを見た。迷った末にぼくはDMを送ってみることにした。
まだKENNERTONのオリジナル、ODINとOEMモデル、HP-1に興味があったからだ。
その時点で、オークションの2モデルは、若干ODINのほうが高価、しかしHP-1には、うちで常用することになるだろう6.3mm標準端子ケーブルが欠品していた。
そのケーブルを、あとで入手することになると、その分の価格と手間も考えておかなければならない。気分的にはどっこいどっこいだ。
DMを送ったブログ主のかたは、親切なかただった。突然の不躾なぼくの質問にも、詳しくお返事いただいた。
どうも技術にも明るいかたのようで、OEM版であるHP-1の形状などから、音の傾向も予測してアドバイスいただき、機種決定の決め手にさせてもらうことになった。
お話によると、どうもODINよりも、HP-1のほうが、ぼくの好みに合いそうだ。
彼はKENNERTONのケーブルを自作までし、自分の思う音色に持っていっているそうだ。
それならば、オークションのHP-1に欠品している、シングルエンドのケーブルも、作成をお願いできないだろうか。厚かましいお願いが頭に浮かんだ。
彼に尋ねてみた。答えはノーだった。
ただし、彼からは別の提案があった。彼は現状自分のKENNERTONのヘッドホンには、自作のケーブルを使用しておられる。製品にもともと付属していたケーブルは使っていない。その純正ケーブルでよければ送料だけで譲りますよ、との申し出をいただいたのだ。
こういうのを渡りに船というのだろう。ありがたい話だ。
ふたつ返信でお申し出をお受けし、すぐにHP-1も運よく落札することができた。
万事うまく回った。
ぼくは無事、気軽に聞く用のヘッドホンを入手することができたのである。